記者会見に臨む石破茂総理

第102代内閣総理大臣に指名されました石破茂であります。
本日、自由民主党と公明党による連立内閣を発足させました。

まず冒頭、能登半島地震、そして、先般の豪雨で犠牲になられた方、傷つかれた方、そういう皆様方に、心から哀悼の誠を表し、お見舞いを申し上げる次第であります。そして、今この瞬間も懸命に職務に当たっておられる多くの皆様方に、心から感謝を申し上げ、敬意を表す次第であります。

私が、長い間、政治家として大切にしてまいりましたのは、国民の皆様方の「納得と共感」ということであります。これもいつも申し上げていることでありますが、国民の皆様方に対して、勇気と真心を持って真実を語る。それが政治の役割だというふうに私は40年近く信じてまいりました。謙虚で、誠実で、温かい政治を行ってまいります。

この内閣での基本方針は、「守る」ということであります。5つの「守る」ということを実行いたしてまいります。

まず、第一に、「ルールを守る」という政治であらねばなりません。
ルールを守る政治を実現していかねばなりません。国民を信じ、国民から信頼される内閣でありたいと思っております。我々は、国民を信じ、勇気と真心を持って真実を語りたいと思っております。
そして、国民から信頼されるために、我々が直ちに取り組まねばならないのは、政治改革であります。国民の皆様方の政治への信頼を取り戻すために、不断の政治改革、この姿勢が求められております。
政治のためにお金がかかるならば、国民の皆様方にそれを丁寧に説明し、当然のことでありますが、節度を持って集めたお金を限りない透明性の下で公開していくことが必要であります。
先般成立をいたしました政治資金規正法に基づき、第三者機関を早期に立ち上げるための具体的議論を進めてまいりますとともに、政治資金のルールを見直し、ルールが守られるための体制を確立してまいります。
もう三十数年も前のことになりますが、当選間もない1回生であった頃に、リクルート事件に端を発した政治不信が吹き荒れました。政治改革に、私どもは若かったのですが、本当に情熱を傾けてまいりました。爾来(じらい)三十数年が経過をし、この度、私は、自由民主党の総裁として、令和の政治改革、これを断行してまいる所存であります。

第二は、「日本を守る」ということであります。
我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しいものだと認識をいたしております。
国家安全保障戦略に基づき、平和を守るための抑止力の強化、防衛力の抜本強化に取り組んでまいります。
現実的な国益を踏まえました外交によりまして、日米同盟を基軸に、友好国・同志国の輪を広げ、外交力・防衛力の両輪で、我が国の平和、地域の安定を実現いたしてまいります。その際、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配を重視し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導してまいります。
防衛力の抜本的な強化は着実に進めてまいりますが、防衛力の抜本的強化と申しましたときに、それは装備だけを意味するものではございません。現在、定員割れとなっております自衛官、その処遇改善、勤務環境の改善、そして、新たな生涯設計の確立が喫緊の課題であると認識をいたしておるところでございます。このことにつきましては、私、内閣総理大臣を長といたします関係閣僚会議を設置し、早急に成案を得るものといたします。
これらの抑止力・対処力の強化に加え、基地負担の軽減にも引き続いて取り組んでまいります。経済安全保障、サイバーセキュリティーの強化にも取り組んでまいります。
拉致問題は、私どもの内閣の最重要課題であります。全ての拉致被害者の方々の一日も早い御帰国を実現すべく、強い決意を持って取り組んでまいります。
在外邦人の皆様方の安全確保にも力を尽くしてまいります。

我々の日本経済は、デフレを脱却するかどうかの瀬戸際にいるという認識を持っております。「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」を実現するため、岸田政権で進めてまいりました成長戦略を着実に引き継いでまいります。
「経済あっての財政」との考え方に立ちまして、デフレ脱却最優先の経済財政運営を行ってまいります。まずその第一歩といたしまして、早期に物価高で苦しんでおられる方々を支援するための経済対策の検討指示を行ってまいります。
従来のコストカット型の経済から高付加価値創出型経済へと転換し、投資大国日本を実現いたしてまいります。新たなサービスを作り出す。自動車、半導体、農業など、輸出企業が外からしっかりと稼ぐ、そして、産業の生産性を向上させる。そのための投資を促進してまいります。
岸田内閣の「資産運用立国」の取組をしっかりと引き継ぎ、更に発展させてまいります。
GDP(国内総生産)の半分以上、54パーセントであったと記憶をいたしておりますが、個人消費が占めております。この後押しが鍵となると私は認識しております。このため、持続的な実質賃金の向上、将来不安を取り除くこと、この2つに取り組んでまいります。

第三は、「国民を守る」ということであります。
国民お一人お一人の生活を守るため、今般の経済対策におきまして、低所得者世帯向け給付金など、物価高への緊急対策を行います。また、最大限の生産性向上や価格転嫁の支援を進めつつ、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円への引き上げを目指してまいります。
将来不安に対応するため、医療、年金、社会保障などは、今の時代に本当に合っているものなのだろうか。国民の将来不安を取り除くため、見直しに着手いたします。
賃金が上がり、消費が増え、人手不足対策を含む設備投資の拡大により、更なる賃金上昇につなげる好循環をつくり出し、一部の企業だけではなく、小さな地域の企業の皆様にまで恩恵を広げてまいります。

我が国は、近年、多くの自然災害に見舞われております。度重なる巨大台風の上陸、線状降水帯の発生など、毎年のように各地で自然災害が起きております。我が国は、世界有数の災害発生国であります。こうした中、我々は、国民の不安に正面から向き合うため、防災庁の設置、国民保護体制の実効性確保に取り組んでまいります。
本年の能登半島地震や大雨からの復旧・復興を着実に進めてまいります。東日本大震災の被災地の復興・再生に全力を挙げてまいります。

第四は、「地方を守る」ということであります。
地方こそが成長の主役であります。我が日本は、農業、漁業、林業の多くの好条件を備えておるところであります。農業、漁業、林業が発展するために、多くの好条件を備えていると、こういう認識を私は持っておるところでございます。観光やサービス産業を含め、日本経済成長の起爆剤として、地方創生担当の初代大臣を務め、人口最少県の鳥取をふるさとに持つ者として、私自身、強い決意を持って取り組んでまいります。
これは地方創生大臣のときによく申し上げたことでございますが、「産官学金労言」と、こう申します。産業界であり、そして、行政であり、そして、大学に限りません。高等学校であり、中学校であり、学問。金というのは、金融機関でございます。労というのは、労働者の皆様方であります。言というのは、地元の報道機関であります。
役所だけが地方創生をやるのではございません。地域の様々なステークホルダーの皆様方が知恵を出し合い、地方がそれぞれの特徴に応じて発展していくこと。これが本質であり、それを政府も後押しをいたしてまいります。
「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、担当大臣を設置し、今後10年間、集中的に取り組む基本構想を作成いたしてまいります。この取組を「地方創生2.0」として強力に推進をいたしてまいります。

第五は、「若者・女性の機会を守る」ということであります。
若い方、女性の方、それぞれの方々の幸せ、そして、人権が守られる社会にしていかなければなりません。あらゆる人が最適な教育を受けられる社会を実現していかなければなりません。このため、教育の改革に力を尽くしてまいります。
女性の権利が尊重され、社会のあらゆる組織において、あらゆる場面の意思決定において、女性が参画することを官民共通の目標としてまいります。多くの女性の方々に社会活動に参加していただくためには、どうすればよいのか。国民的議論を主導し、制度改革に取り組んでまいります。
私は、長い間、準備というものを積み重ねてまいりました。今まさに、準備を積み重ねてきた政治家として、持てる力全てを出して、国民の皆様お一人お一人のために仕事をさせていただく機会を頂きました。5本柱、「5つの守る」を実現し、未来を創り、そして、未来を守っていくため、粉骨砕身、取り組んでまいります。

初当選から38年、多くの地方を回り、多くの方々からお話を承ってまいりました。今、政治に求められていることは何か。それは、今一度、国民お一人お一人と正面から向き合うことだと、このように思っております。そして、国民の皆様方と対話をし、全ての人が安心と安全を感じることができる。そういう日本をつくり上げていかねばなりません。全ての人が「安心と安全」、そして、全ての人に笑顔が戻ってくる、そういう日本をつくっていきたいと思っています。

この内閣は、「納得と共感内閣」というふうに考えております。国民のための政治。何よりも第一に、国民の皆様方に納得していただき、共感していただける、共感と納得の政治を、真っすぐ進めてまいります。

最後に、政治日程について申し上げます。
10月9日に衆議院を解散し、10月15日公示、10月27日に総選挙を行うことといたします。選挙期間が短いため、関係者の皆様方には御負担をおかけいたします。恐縮でありますが、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

国民の皆様方の御理解、御協力を心よりお願いして、冒頭発言を終わります。
ありがとうございました。