安倍内閣総理大臣記者会見(全文)
安定と挑戦の内閣 令和の時代の新しい国づくりに果敢に挑戦していく
まず冒頭、先日の台風15号により被害を受けた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
千葉県を中心に現在も多くの御家庭で停電が発生しており、これに伴い、断水が続く地域もあります。自衛隊の派遣も行い、昼夜を分かたず復旧作業を進めています。他の電力会社にも協力を要請し、作業体制を1万1000人規模に拡大することで、一刻も早いライフラインの復旧に全力を挙げてまいります。同時に、熱中症対策でクーラーが使えるよう、医療、福祉施設だけでなく、避難所や公民館への電源車の配置も進めています。22の市と町に政府職員を既に派遣しており、自治体と緊密に連携しながら、現場主義で住民の皆さんへのきめ細かな支援を行う考えです。
本日、内閣を改造いたしました。令和の時代が幕を開けて初めてとなる今回の改造は、新しい時代の国づくりを力強く進めていく、そのための布陣を整えました。来週は、日本で初めてのラグビーワールドカップが始まります。年が明ければ東京オリンピック・パラリンピック。日本全体が未来への躍動感で満ちあふれる今こそ、新しい国づくりに挑戦すべきときです。安倍内閣は7年目を迎えたこれからも、挑戦あるのみ。常にチャレンジャーの気持ちであらゆる政策分野においてこれまでの発想にとらわれない、大胆な改革に挑戦してまいります。
今回は、これまでで最も多い13名の方が初入閣となりました。
国土交通大臣の赤羽さんは、国会で国土交通委員長を務めたほか、これまで公共交通機関などのバリアフリーを推進してきた方です。東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切る中、障害者の皆さんが安心して生活できるインフラ整備を一層加速していただきたいと考えています。
オリンピック・パラリンピックの担当大臣は橋本聖子さんです。選手としての経験の上に、参議院自民党のトップも務めた政治手腕をいかし、2020年の最大のイベントの成功を期します。夏・冬最多7回の五輪出場など、女性アスリート第一人者としての経験、国会議員としても産休の制度化など、出産・育児との両立に取り組んできた経験で、女性活躍の旗振り役もお願いします。
法務大臣は河井克行さん。かつて法務副大臣も務め、法曹人材の育成や、更生保護について議員連盟を取り仕切るなど、法務行政のプロです。
経済産業大臣の菅原一秀(すがわら いっしゅう)さんは、副大臣、党の部会長も務めた専門家です。商社マンとしてビジネスで海外を飛び回った経験も持ち、日本企業の国際競争力の強化、ロシアとの経済協力、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)などの通商交渉でもその手腕を期待しています。
農林水産大臣の江藤拓さんも政務官、副大臣を歴任した農政通。これまで総理補佐官としてともに農産物輸出を推進してきました。世界に目を向けながら、持ち前の現場感覚で若者たちが未来を託せる農林水産新時代を切り開いていただきたいと思います。
私が最も重視している地方創生の担当大臣は北村誠吾(きたむら せいご)さん。長崎県の県議、佐世保市の市議の経験もあり、地方の実情を十分に熟知している方です。総務大臣として再入閣、地方自治から情報通信まで幅広い総務行政に精通した高市大臣と二人三脚で、過疎化など、地方が直面する困難な課題に果敢に挑戦してもらいます。
いずれも当選7回、8回の大ベテラン、政治家に求められる高い調整能力と政策実行力を兼ね備えた人材です。様々な有権者の声に耳を傾け、毎日、部会などでの議論を重ねながら、政策を地道に練り上げていく。こうしたプロセスの中で長年大きな力を発揮してきたベテランが、我が党にはたくさんいます。
田中復興大臣は、党の組織運動本部長、予算委員会の与党筆頭理事など、国政全体をふかんしながら、現場の意見調整に汗を流してきた方です。正に総合力が問われる福島の再生、東北復興でその手腕を発揮してもらいます。
イノベーション担当大臣は竹本直一さん。旧建設省の出身で、行政経験に加え、国会で科学技術特別委員長も務めた方です。党の中で中小企業政策に長年携わってきた視野もいかし、現場目線のイノベーション政策を展開してもらいたいと思います。
自民党は老壮青、人材の宝庫です。これまでも齋藤健さんや丸川珠代さん、森まさこさん、そして山下貴司さん、次の時代の自民党を担う若手の皆さんも積極的に登用してまいりました。 今回は、小泉進次郎さんに環境大臣を担当してもらいます。G20大阪サミットでも大きな議論となった海洋プラスチックごみや気候変動など、地球規模の課題に、手あかのついた従来の議論ではなく、若手ならではの斬新な発想での取組を期待しています。党の青年局長としてTEAM-11をスタートさせ、復興に長年取り組んできた方でもあり、中間貯蔵施設の建設など、福島再生という大きな課題にも全力で挑戦してもらいたいと考えています。
武田防災担当大臣は、二階幹事長の下で特別補佐を務め、党務全般にわたる調整に当たってきました。毎年、甚大な自然災害が相次ぐ中、省庁の縦割りを排し、次元の異なる防災対策、国土強靱(きょうじん)化を進めてもらいたい。その政治手腕に期待しています。
最大の挑戦は、急速に進む少子高齢化への対応です。お年寄りも若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが思う存分その能力を発揮できる一億総活躍社会を創り上げる。この内閣の最重要課題を衛藤晟一(えとう せいいち)さんにお願いしました。政権発足以来6年半、総理補佐官として内閣の重要政策に携わり、私の考え方もよく熟知しています。長年、障害者の方々、とりわけ障害のある子供たちの自立のために力を尽くしてきた方です。少子化担当大臣も兼務し、一億総活躍政策の完成に向けて、次なる展開を主導してもらいます。
そのキーワードは多様性です。みんなが横並び、画一的な社会システムを根本から改めなければなりません。「みんなちがって、みんないい」、「ゆりかごから墓場まで」、いつでも誰でもその個性をいかせる社会、その目標に向かって、教育、労働、社会保障、3つの改革に安倍内閣は挑戦してまいります。
多様な学びを可能とする教育再生、その担当はかつて官房副長官として内閣府の屋台骨を支えてもらった萩生田(はぎうだ)さんです。フリースクールへの支援など、これまでの取組を更に拡大し、教育の複線化という大きな課題に挑戦してもらいたいと思います。
働き方改革への挑戦は、二度目の厚労大臣となる加藤さんです。保育や介護との両立、意欲ある方々の兼業・副業、障害や難病のある方の就労機会の拡大など、多様な事情に応じて、多様な働き方が可能となる社会を創り上げます。
そして、第3の挑戦、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度へ改革を進めていく。全世代型社会保障改革担当大臣は、これまで官房副長官だった西村康稔(にしむら やすとし)さんです。新たに全世代型社会保障検討会議を設けます。人生100年時代を見据え、70歳までの就業機会の確保、年金受給年齢の選択肢の拡大、さらには医療、介護など、社会保障全般にわたる改革を進めます。西村大臣を中心に、加藤厚労大臣など関係大臣の総力を挙げて、子供たちからお年寄りまで、全ての世代が安心できる令和の時代の新しい社会保障制度の在り方を大胆に構想してまいります。来週にも第1回の会議が開催できるよう、西村大臣には早速準備に取り掛かってもらいます。
外務大臣は茂木さんにお願いしました。大詰めを迎えている米国との貿易交渉も引き続き担当してもらいます。TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の困難な交渉を妥結に導いた毅然(きぜん)とした外交手腕は、海外からも高く評価されています。積極的な経済外交の展開など、日本外交の奥行きを更に広げてもらいたいと思います。
昨日も北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。引き続き、十分な警戒の下、米国などと緊密に連携しながら、国民の安全確保に万全を期します。
我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、外交政策と安全保障政策の連携の必要性はますます拡大しています。外務大臣を務めた河野さんに、次は国防を担ってもらいます。これまで世界中を回った経験を糧に、ダイナミックな安全保障政策を展開してもらいたいと考えています。
内政、外交にわたる各般の挑戦を進め、令和の時代の新しい日本を切り開いていく。そして、その先にあるのは、自民党立党以来の悲願である憲法改正への挑戦です。いずれも困難な挑戦ばかりでありますが、必ずや、成し遂げていく。そう決意しています。
そして、そのためには何よりも、安定した政治基盤が不可欠であります。政治の安定なくして、いかなる挑戦も成就することはありません。今回も、党の政権運営の要である二階幹事長、岸田政調会長に留任いただくこととしました。新たに加わる政治経験豊富な大ベテラン、鈴木総務会長、下村選対委員長とともに、政治の安定を支えていただきます。
政府にあっても、麻生副総理、菅官房長官には、それぞれデフレ脱却、沖縄の基地負担軽減と拉致問題の解決という政権の最重要課題を、内閣の要として引き続き担当していただきます。
しっかりと安定した土台を維持しながら、その上に老壮青、幅広い人材、フレッシュな強い突破力によって、令和の時代の新しい国づくりに果敢に挑戦していく。今回の内閣は正に、安定と挑戦の内閣であります。国民の皆さんとともに、令和の時代の希望にあふれ、誇れる日本を築き上げていく。新しい安倍内閣のチャレンジに国民の御理解と御支援を賜りますように、お願いを申し上げます。
私からは以上であります。