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月刊誌「りぶる」特集 8月号より

循環経済を国家戦略に

井上信治
自由民主党環境・温暖化対策調査会長

資源・エネルギー需要や食糧需要の増大、廃棄物発生量の増加、地球温暖化などの環境問題が世界的に深刻化する中、資源の価値を可能な限り維持し、循環的に利用する「循環経済」の推進が求められています。今年4月、政策提言「~循環経済を国家戦略に~」を取りまとめた党環境・温暖化対策調査会の井上信治会長に、提言の概要やポイント、循環経済の国家戦略実現に向けた取り組みなどについて伺いました。

取材日:令和6(2024)年6月18日

さまざまな環境問題の
解決や経済安全保障の確保につながる

―循環経済について教えてください。

井上信治党環境・温暖化対策調査会長(以下、敬称略)循環経済とは、資源の価値を可能な限り維持し、循環的に利用する取り組みのことです。廃棄物を資源として有効活用したり、製造の段階からリサイクルや再利用がしやすい設計にしたりすることで、廃棄物の排出や天然資源の利用を最小化することが可能になります。
 わが国は気候変動、生物多様性の損失、環境汚染などの環境問題に直面しています。また、人口減少に伴う地域経済の縮小や、世界的な資源制約の動きは、これまで予測されてきた以上に深刻な状況です。これらの課題を解決しながら国民の豊かな暮らしを実現するには、資源を循環利用していくことが不可欠だと考えます。

―資源を循環利用している身近な事例を教えてください。

井上例えば“都市鉱山”が挙げられます。これは、使用済みの家電、携帯電話、パソコン等の製品から金属材料を回収し、再利用することです。都市で大量廃棄された製品から資源(再生材)を得るため、鉱山での採掘に例えて、このように呼ばれています。
 日本は資源が少ない国ですから、モノを大切にする国民の意識を高めながら、廃棄物をごみではなく資源として循環利用していくことは、ものすごく大事だと思います。

令和6(2024)年4月23日、政策提言「~循環経済を国家戦略に~」を岸田文雄総理に手交

―循環経済への移行が必要なのはなぜですか。

井上資源の消費を最小化することによって、カーボンニュートラル※1やネイチャーポジティブ※2の実現に貢献することができるからです。
 世界的に再生材の利用が進む中、わが国が循環経済への移行によって再生材の供給を増やしていくことができれば国際的な競争力の強化につながります。
 また、価格高騰や供給リスクの懸念がある重要鉱物等の資源を最大限循環利用していくことによって、経済安全保障の確保が図れます。
 循環経済への移行は、単に環境に良いだけでなく、このように副次的な効果も期待できることから、これからの時代の大きなキーワードになっていくことは明らかです。世の趨勢を見極め、日本は政府一丸となって取り組んでいくべきと考えます。

※1:温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすること
※2:自然再興。自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることを指す

加速する再生材利用推進の動き
ルール形成等で世界をリードしたい

井上信治 自由民主党環境・温暖化対策調査会長
循環経済に関する世界の動向について語る
井上信治 党環境・温暖化対策調査会長

―循環経済に関する世界の動向を教えてください。

井上EU(欧州連合)の主要機関の一つである欧州委員会が2015年12月に発表した報告書「EU新循環経済政策パッケージ」をきっかけに、循環経済への移行に向けた取り組みが世界中に広まりました。現在、EU域内では再生材に関連する制度の導入・検討が進んでいます。
 例えば、プラスチック製包装に再生プラスチックの使用率を設けることを2022年に提示。その翌年に、新車の製造に使用されるプラスチックの25パーセントをリサイクル材にすることを義務付けたELV(廃自動車)規則案を提案した他、各種電池に再生材の最低含有率規定などを示したバッテリー規則が採択されました。

 循環経済の動きは、グローバル企業でも活発化しています。例えば、アップル社は14品目の再生材利用を推進。2023年時点で、全素材のうち約22パーセントが再生材になっています。また、アパレル企業のパタゴニア社は、2025年までに全製品を再生材と再生可能な原料またはリサイクル素材のみで作ることを目標に掲げています。
 再生材の利用促進が加速する中、その流れに乗り遅れ、世界の金融や貿易等から排除されてはいけません。わが国は、昨年「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」で企業の循環経済に関する行動を促進する「循環経済及び資源効率性原則」を提唱し、採択されるなど、国際的な議論を主導してきました。環境・温暖化対策調査会は、日本政府が引き続き、国際社会の資源循環に関するルール形成等にリーダーシップを発揮して取り組んでいけるよう、しっかりとサポートしていきたいと思います。

提言には具体的な数値目標等を盛り込む
循環経済への移行を経済成長のチャンスに

―政策提言「~循環経済を国家戦略に~」について教えてください。

井上環境・温暖化対策調査会は今年2月、循環経済に関する政府の取り組み状況をヒアリングしました。そして、先進的な取り組みを実施している企業や自治体をはじめ、有識者へのヒアリングを丁寧に行いながら議論を積み重ね、今年4月に政策提言「~循環経済を国家戦略に~」を取りまとめました。
 提言の柱は、(1)循環経済による産業競争力の強化、経済安全保障の確保(2)資源循環にも資する豊かな地域やくらしの実現(3)国際ルール形成への主体的関与、国内マーケットの創出支援(4)循環経済を国家戦略に―の四つで、政府に戦略的・統合的な取り組みを実行することを求めています。

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

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