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月刊誌「りぶる」特集 7月号より

新しい地域スポーツの創造と
部活動改革に向けて

宮内秀樹 自由民主党スポーツ立国調査会 地域スポーツプロジェクトチーム座長
宮内秀樹
自由民主党スポーツ立国調査会
地域スポーツプロジェクトチーム座長

わが国のスポーツ振興を支えてきた子供たちの運動部活動。しかし近年、その維持が難しくなってきています。党スポーツ立国調査会地域スポーツプロジェクトチーム(以下、PT)は昨年、提言「新しい地域スポーツの創造と部活動改革」を取りまとめ、学校と地域との連携・協働による持続可能な活動環境の整備を目指しています。PTの宮内秀樹座長に、部活動改革や地域スポーツを支える新しい仕組み、7~9月に開催されるパリ五輪・パラリンピックなどについて伺いました。

取材日:令和6(2024)年5月10日

少子化と学校の働き方改革が進展する中で
子供たちがスポーツをする環境を確保

―なぜ今、運動部活動の改革が必要なのでしょうか。

宮内秀樹党スポーツ立国調査会地域スポーツPT座長(以下、敬称略)社会が目まぐるしく変化し続ける中、子供たちがスポーツをする環境を確保したいからです。少子化が進む日本では、昭和61(1986)年に約589万人いた公立中学校の生徒数が、令和3(2021)年には約296万人とおよそ半減。1学年の生徒数も少なくなり、学校単独の部活動ではチームが組めないという事態が発生しています。
 例えば、1チームに野球は9人、サッカーは11人必要ですが、この人数がそろわず、複数の学校が合同でチームを編成して大会に出場するケースも近年は珍しくありません(資料1〜3参照)。  スポーツ庁の将来予測によると、令和35(2053)年には、中学校の男子軟式野球部の部員数は1校当たり3.9人、女子ソフトボールは7.4人になると推計されています。学校だけではもはや、子供たちに豊かなスポーツ環境を保障できなくなりつつあるのです。

 そして、運動部活動の改革が必要なもう一つの理由は、教師の長時間勤務や休日出勤を是正するためです。
 学習指導要領には「中学校の教師は部活動で指導しなさい」「土・日曜も部活動の顧問として引率しなさい」などとは書かれていません。部活動は学校の判断により設置され、必ずしも教師が担う必要のない業務であるにもかかわらず、教師が顧問を務め、指導を行うことが常態化しているのです。

資料1 1運動部あたりの人数の推移
資料2 運動部活動数の推移
資料3 中学校における合同部活動実施チームの推移

 今の学校現場は、教師が部活動の指導に費やす時間がかなり長く、ワークライフバランスを保つのが難しい状況です。こうした教師の過酷な働き方が、教師志望の学生を減少させている要因の一つとも言われています。PTでは、教師たちの勤務時間以外の時間をWell-being※1の観点から、自身の人生をもっと楽しめる生活スタイルになることを目指しています。

―宮内座長は部活動をしていましたか。

宮内はい。中学・高校と野球部に入って、甲子園を目指していました。休みは正月の1日だけで、あとは364日朝から晩まで練習ばかりしていましたが、野球に真剣に取り組んだこと、最後までやり続けたことに対するプライドは、今の私にとってかけがえのない財産になっています。 また、学校を卒業した後も当時の部活動仲間とは交友が続いており、部活動をしていて本当に良かったです。

宮内秀樹 自由民主党スポーツ立国調査会 地域スポーツプロジェクトチーム座長
※1:健康で安心な状態、満足できる生活など、広い意味での「幸福」を指す

部活動の地域連携、地域クラブ活動への移行
新しい地域スポーツの在り方を検討

―運動部活動の改革について、これまでの政府の取り組みを教えてください。

宮内平成30(2018)年、スポーツ庁が発表した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」で、少子化が進む中で運動部活動を持続可能にしていくための方策が示されました。
 さらに令和4(2022)年には、このガイドラインを全面的に改定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」をスポーツ庁と文化庁が発表しました。義務教育である中学校の休日の運動部活動について、地域連携や地域クラブ活動への移行を打ち出し、令和5(2023)年度から令和7(2025)年度までの3年間を「改革推進期間」と位置付けています。
 地域連携とは、学校の責任下で、地域の方に部活動指導員や外部指導者として参画していただき、複数の学校で合同部活動を行ったりすること。地域クラブ活動への移行とは、部活動の運営を地域が主体として行う活動に代替させていくことを指しています(資料4参照)。

資料4 運動部活動の地域連携と地域クラブ活動への移行

―党スポーツ立国調査会地域スポーツPTでは、どのような議論が行われましたか。

宮内現場で活躍するスポーツ関係団体・地方自治体・民間事業者等の説明や意見、要望等を丁寧にヒアリングしながら、鋭意議論を重ねてまいりました。
 日本人は総じてスポーツが好きです。サッカーやバレーボールのようなメジャーなものだけでなく、年齢や性別、障害の有無にかかわらず全ての人が共に楽しめるボッチャなどの種目も含めて、スポーツが健康や地域コミュニティーの活性化につながる仕組みづくり等を検討しました。そして、どうすれば地域連携・地域クラブ活動への移行が実現できるかという観点で、令和の時代にふさわしい地域スポーツの在り方を考えてきました。

―昨年5月に取りまとめた提言の概要とポイントを教えてください。

宮内地域スポーツPTとして「今後のスポーツ立国の実現に向けて」と題し、政府へさらなるスポーツ振興の必要性等を提言しました。
 要望事項の一つが「新しい地域スポーツの創造と部活動改革」です。具体的な仕組みとして、(1)地域スポーツ推進体制の構築(2)スポーツ指導者の量と質の確保(3)安全確保の体制づくり(4)地域スポーツの活動拠点づくり―の四つを挙げ、取り組みの強化を求めています

インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください

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