月刊誌「りぶる」特集 6月号より
令和6(2024)年2月、政府が「食料・農業・農村基本法」の改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指しています。自民党は令和4(2022)年に食料・農業・農村基本法検証プロジェクトチームを設置し、この改正案の策定を主導してきました。プロジェクトチームの武部新事務局長に、日本の農業や食料供給の現状、法改正の必要性、改正案のポイントなどを伺います。
―初めに日本の農林水産業について教えてください。
武部新党食料安全保障に関する検討委員会 食料・農業・農村基本法検証プロジェクトチーム事務局長(以下、敬称略)農林水産業は、新鮮で安全な食料を提供したり、住宅や家具などの材料となる木材を提供したりするだけでなく、大気浄化など環境を保全する役割も果たしています。つまり、人々の生きる力や健康を育んでおり、われわれにとって最も身近な産業と言えます。
そして、多くの地方が農林水産業を基幹産業にし、地元の農水産物を使用した食品製造業が産業として根付いています。農林水産業や食品製造業は、地域の経済にとって大変重要な役割を果たしているのです。
―農業の特徴や役割は何ですか。
武部農林水産業の中でも、とりわけ農業は〝国の基〟です。わが国は温暖湿潤な気候で、急峻な山と中山間地域が多いという特徴があり、それらを生かして米、野菜・果物、花卉、畜産、酪農などの多様な農業が日本各地で展開されています。
多彩な品目が栽培されていることも特色です。生産技術は世界でもトップレベルにあり、日本の農畜産物は「高品質で安全・安心」だと、国際社会から高く評価されています。それは、農家の皆さまが日々愛情を持って真面目に積み重ねてきた努力のたまものだと思います。
そして、農業は食料を生産するだけでなく、多面的な機能を持ち、持続可能な社会をつくる上で大変重要な役割を果たしています。
―多面的な機能とは何ですか。
武部例えば水田は、水中や土の中の微生物が落ち葉等の有機物を分解することなどにより、水質を浄化する働きがあります。また大雨が降った際には、一時的に雨水をため、徐々に排水することで洪水の被害を軽減・防止でき、地域の環境や安全を守ります。
さらに農業を支える農村は、独自の生活様式や農耕神事、伝統芸能などの文化を生み出してきました。農業には、食料の生産だけでは表せない多面的な価値があるのです。
―「食料・農業・農村基本法(以下、基本法)」は、どんな法律ですか。
武部農政の基本理念と施策の方向性を示した法律です。基本理念として、食料の安定供給、農業が持つ多面的機能の発揮、農業の持続的な発展とその基盤としての農村の振興を掲げ、それを具体化するための施策を明示しています。農政の基本となる事項を規定したものであり、〝農政の憲法〟と呼ばれることもあります。
―なぜ今、基本法の改正が必要なのでしょうか。
武部基本法が制定されたのは、今から25年前の平成11(1999)年です。食料供給や農業を取り巻く国内外の状況が大きく変化し、内容を見直す必要が出てきました。
例えば、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した時、サプライチェーン(供給網)が断絶されました。また、ロシアのウクライナへの侵略等による影響で物価が上がり、食料を生産するための肥料や家畜の餌なども高騰しています。
さらに、日本は人口減少に伴い農業の担い手が減少していますが、世界では人口が増加している上に気候変動等が進み、食料の生産が不安定になってきています。食料を確保するための国際競争が激化する中、日本は経済力や購買力が低下しつつあり、急成長を遂げる新興国に買い負ける事態も発生しています。食料を国民に安定供給するための環境は、基本法ができた25年前に比べると、大変厳しくなってきているのは明らかです。
インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください
月刊誌「りぶる」では、女性ならではの視点で
しなやかな発想で世の中を見つめ
国際情勢から政治、経済、日常の身近な問題まで、
幅広い話題をわかりやすく解説します。
発行日 | 毎月15日発行 |
---|---|
年間購読料 | 3,800円 (税・送料込) |
定価1部 | 320円 (税込) |