月刊誌「りぶる」特集 2月号より
令和5(2023)年6月、党物流調査会は「国民生活や経済を支える物流の革新に向けた提言」を取りまとめ、岸田文雄総理に申し入れました。
党物流調査会の今村雅弘会長に物流が果たす役割や提言の概要、持続可能な物流の実現に向けて国民一人一人にできることなどを伺いました。
―そもそも物流とは何ですか。
今村雅弘党物流調査会長(以下、敬称略)自らの意思で動ける旅客と異なり貨物は全て運んでやらねばなりません。国民生活や経済活動、地方創生等を支える重要な社会基盤です。物流によって、社会は発展・成熟し、私たちの生活もまた快適で豊かなものになっています。
国土を人間の体に例えるなら、物流は血流になります。血液の流れが悪くなると生命に関わる病気のリスクが高くなるように、物流が滞るとモノが消費者の隅々まで届かなくなり、社会にさまざまな弊害をもたらします。
日本経済が力強く成長するにも、物流の機能を十分に発揮していく必要があります。
―わが国の物流の特徴を教えてください。
今村国内貨物輸送量の約9割を占めているのがトラックです。トラックドライバーは、全産業と比べて労働時間が2割ほど長いにもかかわらず、所得が1割ほど低く(資料1参照)、労働環境や待遇の改善が求められています。特に、拘束時間が長くなる長距離ドライバーは、担い手不足が深刻です。
こうした状況の中で、5年間の猶予期間を経て令和6(2024)年4月から、トラックドライバーに働き方改革の法律が適用されます。年960時間を超える時間外労働ができなくなり、一人当たりの労働時間の大幅な短縮が求められています(資料2参照)。このまま何も対策を講じなければ、令和6(2024)年度には14.2パーセント、令和12(2030)年度には34.1パーセントの輸送力が不足し、これまでのようにモノが運べなくなる可能性が指摘されています(資料3参照)。さらに、物流業界の売り上げ減少、トラックドライバーの収入減少なども予測され、これらの諸問題のことを物流の「2024年問題」と呼んでいます。
―具体的に、どのようなことが起こるのでしょうか。
今村モノが運べなくなれば、産業界や消費者に、さまざまな悪影響を及ぼすことが考えられます。
産業界では、例えば原料や材料のスムーズな調達等ができなくなり、生産に支障を来します。また、消費者は、注文した品物が約定日に届かなかったり、荷物を送るのに時間がかかったり。宅配サービスの質が低下するだけでなく、遠方の青果物や水産品などの新鮮なものが手に入らなくなり、その輸送コスト増の負担方いかんによっては地方創生にも深刻な問題となります。
トラックドライバーにおける時間外労働の上限規制以外に、4月から大きく変わるのが原則13時間以内※1に定められた1日の拘束時間です。これまでのように一人のドライバーによる長距離輸送ができなくなり、複数人の短・中距離輸送を組み合わせたリレー方式で目的地まで荷物を運ぶことになります。そのため、輸送に時間がかかる他、人件費が膨らんで商品の価格が高くなる恐れも指摘されています。
「2024年問題」は物流業界のみならず、将来にわたって国民にとって喫緊の課題なのです。
―「2024年問題」に対する党物流調査会の取り組みを聞かせてください。
今村党物流調査会では、待ったなしの「2024年問題」に対応するため、関係者からヒアリング等を行ってきました。そして令和5(2023)年6月1日に「国民生活や経済を支える物流の革新に向けた提言―物流を取り巻く諸課題への対応―」を取りまとめ、岸田総理に申し入れを行いました。
提言は、(1)GX・DX・モーダルシフトや標準化等による物流の効率化。(2)荷主・物流事業者間等における多重的な取引実態の是正。(3)荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入―の三本柱で、物流の革新に向けた取り組み等をまとめています。
インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください
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