月刊誌「りぶる」特集 10月号より
10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」です。
環境・温暖化対策調査会 食品ロス削減PT(プロジェクトチーム)は、4月に食品ロスに関する提言を取りまとめました。
同PTの堀内詔子座長と土屋品子座長代行が、食品ロスの現状や削減のため一人一人にできること、提言のポイントなどを語り合いました。
―食品ロスとは何ですか。
堀内詔子環境・温暖化対策調査会 食品ロス削減PT座長(以下、敬称略)本来、食べられるにもかかわらず、捨てられている食品のことです。現在、わが国では、食べ残しや売れ残り、消費期限が切れたなど、さまざまな理由で、年間約523万トン※1の食品が廃棄されています(図1参照)。
これを国民一人当たりに換算すると、1日約114グラム。毎日お茶わん一杯分のご飯が捨てられている計算になります。
土屋品子環境・温暖化対策調査会 食品ロス削減PT座長代行(以下、敬称略)日本は世界有数の食料輸入国です。食料の約6割(カロリーベース※2)を輸入に頼っていますが、その一方では多くの食料を食べずに捨てているのです。世界には飢餓に苦しんでいる人がたくさんおり、この状況は改善しなければいけませんね。
食品ロスは、こうした食料問題以外にも経済や環境などに多大な影響を及ぼしています。例えば、捨てられた食品を処分するには、多額の費用がかかります。また、食べ残しは生ごみとして処理されますが、水分をたくさん含んでいるため、焼却すると地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)をたくさん排出することも大きな問題となっています。
堀内食品ロスが地球温暖化にどのような影響を与えているのかを示したデータをご紹介しましょう。2019年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」※3が発行した報告書によると、温室効果ガス全体のうち、8~10パーセントが食品ロスに起因していることが明らかになりました。
食品ロスは、いまや地球規模の課題として世界中で削減の取り組みが進められ、令和元(2019)年に開催された大阪サミットでは「食料の損失・廃棄を削減すること」が宣言に盛り込まれました。
土屋日本の食品ロスを約100万トン削減することで、CO2の排出量を約46万トン抑えることができます。
私たち一人一人が食品を無駄なく、大切に食べることが地球規模の課題解決につながることを、『りぶる』読者の皆さまにもご理解いただけると、ありがたいです。
国連は2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」において、2030年までに世界の一人当たりの食品ロス量を半減させる等の目標を掲げています。これを踏まえ、わが国は2000年度の食品ロス量の約980万トンを基準に、2030年度までに約489万トンに半減することを目指しています。
―食品ロス量が多い要因をどのようにお考えですか。
土屋食品ロスは大別すると、事業者と家庭から発生していますが、前者については主に二つの要因が考えられます。
一つは、食品の生産から消費までの流れ(フードサプライチェーン)による要因です。例えば、パッケージに印字ミスがあったり、商品の入った段ボール箱が配送中にへこんだりしたとします。こうしたケースでは、中身の品質にかかわらず返品・廃棄される場合が多く、食品ロスの増大に拍車をかけています。
もう一つは、食品流通の分野で浸透している商慣習が挙げられます。
―どのような商慣習ですか。
土屋「3分の1ルール」と呼ばれるものです。食品の流通過程において、製造者(メーカー)、 販売者(小売り)、消費者の3者が、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ均等に分け合うという考え方に基づいています。
堀内例えば、製造日が6月1日で、賞味期限が6カ月の食品があったとします。3者で3分の1ずつですから、メーカーから小売りへの納品期限は7月末まで、小売りの販売期限は9月末までとなり、この期限を過ぎると食品はメーカーに返品されます。
3分の1ルールを適用するメリットは品質を維持した商品を消費者に届けられること。その一方でデメリットは、メーカー側で大量に在庫を抱えるリスクがあり、これらの廃棄を余儀なくされることです。
近年は、納品期限を3分の1から2分の1に延ばすなどルールの緩和が進むとともに、販売期限を越えた商品を「賞味期限間近」と銘打ち、価格を安くして販売する店が増えるなど、食品ロス削減に向けた取り組みが徐々に増えてきています。
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