『りぶる』創刊40周年記念企画
河野太郎広報本部長
河野太郎広報本部長が、いま輝いている人と対談する新企画。
ゲストは、国連事務次長・軍縮担当上級代表として、国際舞台で活躍されている中満 泉さんです。
河野広報本部長と、アメリカのニューヨークにいる中満さんがオンライン対談を行いました。
河野自民党の広報誌である『りぶる』が、今年創刊40周年を迎えました。その記念企画として、国連(国際連合)軍縮部門のトップとして奔走されている中満泉さんとの対談を行いたいと思います。
中満光栄です。ありがとうございます。
河野初めに中満さんが、国連で仕事をしようと思ったきっかけを教えていただけますか。
中満意識したのは高校生の時です。当時、私は横浜市にあるキリスト教系の学校に通っていて、ある朝の礼拝でシスターからマザー・テレサについての話を聞いたのがきっかけです。「世の中のため、世界のために活動する生き方」に衝撃を受け、自分に何ができるかを考えた時、「将来、国連のような国際機関で働くのもいいのかな」と、漠然とそう思いました。
その後、大学3年生の時に、1年間の交換留学で海外に行くことになり、その夢が少し現実的に。留学先で実際に勉学にいそしんだり、女性のリーダーが生き生きと働く姿を見たりして、「私も努力をすれば、夢をかなえられるのではないか」と考え始めました。それからワシントンにある大学院への進学を目指し、そこで国連にチャレンジすることが具体的な目標になりました。私は国際法や人道法、難民法などを勉強していましたので、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を希望し、試験に合格。高校生の頃に漠然と描いていた夢が現実のものとなりました。
河野実際に国連で働かれて、いかがですか。
中満国連はリアリズムがぶつかり合うところなので、ものすごく苦労が多いですが、その分、やりがいを感じています。国連難民高等弁務官事務所に入所後、さまざまな現場や国連本部、国際連合平和維持(PKO)局、国連開発計画(UNDP)などを経て、5年前から現職の軍縮部を担当していますが、厳しい現実の中で、自分なりに努力して、どうやって理想を追求していったらよいのかを常に考えて行動しています。
日本人として、また地球に住んでいる一人の人間として、世界中から集まった同じ志を持つ同僚たちと一緒に、さまざまなプロセスに関わっていけることが、国連で働く醍醐味ではないかと、日々実感しています。
河野中満さんは、日本人女性初の国連事務次長です。このポジションに就かれて、大きく変わったことはありますか。
中満いろいろな方に指摘されるまで、実は自分が日本人女性初の国連事務局の国連事務次長とは知らなかったんです(笑)。
私個人としては、これまで通り仕事を積み重ねていくだけだと考えています。一番重要なのは、傲慢にならず、誠実に日々努力を重ねていくこと。国連憲章の価値観に基づいて活動することを心に留めています。
しかし、事務次長というポジションに就いたことで、私が発言する一言一句が注目されるようになりました。例えば、今回のウクライナ情勢を巡っては、安全保障理事会(安保理)で生物兵器問題について2度説明しましたが、一言でも誤ると大問題になるので、絶対に間違えてはいけないという緊張感とプレッシャーがものすごかったです。
河野日本人が国際社会で活躍しようとした時、最初のハードルになるのが言葉の問題です。英語は、どのようにマスターされましたか。
中満私は帰国子女ではなく、21歳までパスポートすら持っていませんでした。ニュアンス的なことも含め、使いこなせるようになるまで時間がかかりましたが、言葉は努力次第だと感じています。
私の場合、最初に留学した所に日本人はほとんどいなかったので「徹底して英語で考え、英語で生活する」環境に身を置くことができたのが英語をマスターする近道になったと思います。また、大学院時代に、ある教授から「とにかく辞書を使わずに読み込み、それを英語で要約しなさい。何回も出てくる言葉がどうしても分からなかったら、その時だけ辞書を引きなさい」と言われ、それらを実践したこともプラスになっています。
国連の会議ではスピーチをする機会が多いのですが、公の場で話す力も大学院時代に培いました。
ありがたいことに、私はロータリー財団の奨学金を受け取ることができ、その時、ホストファミリーのように面倒を見てくださった人が、いろんな所でスピーチをする機会を与えてくれました。「だまされたと思ってやってごらん。あなたが将来やりたいと思っている仕事に就いた時、人前で考えをまとめて話すスキルが必要になるから」と言われて…。今は、とても感謝しています。
国連事務次長・軍縮担当上級代表
早稲田大学法学部卒業。アメリカのジョージタウン大学大学院修士課程修了後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入所。企画調整局長、国際連合平和維持(PKO)局政策・評価・訓練部上級部長、同局アジア・中東上級部長、国連開発計画(UNDP)危機対応局局長・国連事務次長補などを歴任。2017年5月より現職。2女の母。
インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください
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