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月刊誌「りぶる」 7月号より

新型コロナワクチン接種の
加速化に向けて

河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣講演
新型コロナワクチン接種の加速化に向けて

河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣
河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣

5月26日、女性のための政治塾「第25回 女性未来塾」がオンライン形式で開催され、約200人の受講生が参加。
河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣が講演しました。

※取材は、感染症対策を十分に実施した上で行っています

各省庁に横串を通し、ワクチン接種を総合調整
ゴールデンウイーク明けから高齢者接種に全力疾走

 1月18日の夕方、菅義偉総理に呼ばれて官邸に行くと、いきなり「新型コロナワクチン接種推進担当大臣をやってくれ」と言われ、いすから転げ落ちそうになりました。本来であれば、この仕事は厚生労働大臣の担当です。しかし、田村憲久大臣は衆参の厚生労働委員会と、新型コロナウイルス対策で身動きが取れない状況でした。ワクチンの承認など政策に絡むことは田村大臣、ワクチン接種を円滑に進めるための段取りは私と、担当を切り分けて進めることになりました。

 新型コロナワクチンは、最大1億人の国民の皆さまが短期間に2回の接種をします。ワクチンそのものは厚生労働省の管轄ですが、それを海外から手に入れる交渉は外務省が行います。極めて低温の冷凍庫を調達するのは経済産業省、全国にワクチンを配送するのは国土交通省、注射器などの医療廃棄物の処理は環境省、ワクチン詐欺への対応は消費者庁など、ありとあらゆる省庁が関わる、まさに前代未聞のプロジェクトです。

 私は5年前、防災担当大臣でした。熊本地震の発災時は、当時の菅官房長官と共に、自治体からの要請を待たずに被災地に物資を緊急輸送する「プッシュ型支援」を初めて行いました。また、今やっている行政改革や規制改革も、縦割りの各省庁に横串を通すのが仕事。「その一環でワクチン接種の総合調整を担いなさい」ということで、私に白羽の矢が立ったのだろうと思います。

 そして拝命以来、一人でも多くの人に、一日も早く新型コロナワクチンを打っていただくための努力をしています。

河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣

 新型コロナワクチンの話になると、最初によく聞かれるのが「なぜ日本は遅れたのか」ということです。

 例えば、アメリカは昨年12月にファイザー社のワクチンを打ち始めています。この国際的な臨床試験(治験)は昨年7月に始まりましたが、当初は日本も参加する予定でした。しかし、日本は欧米に比べて感染者が桁違いに少なかったため、その対象から外されてしまったのです。

 この治験でファイザー社のワクチンは有効性95パーセントと、非常に発症予防効果の高いことが確認されました。しかし、日本は1970年代にワクチンの副反応による集団訴訟などが起こった歴史があります。慎重の上にも慎重を期すため、厚生労働省は昨年10月に日本人160人を対象とした治験を行い、安全性をしっかりと確認した上で、今年2月に承認しました。欧米に比べて承認が遅れたのは、安全性を優先した結果です。

 もう一つの理由は、ファイザー社が世界中からの需要に製造ラインを増やして応えようと、今年初めに体制を整えるためヨーロッパ工場の稼働を一時ストップしたからです。その間、日本には限定的な量のワクチンしか入ってこなかったので、まず医療従事者から打ち始めていきました。

 5月からは毎週約1000万回分のワクチンが国内に入ってくることになっていましたが、全国知事会などから「いきなり“よ~いドン!”で全力疾走と言われても困る。さまざまな手順やシステムなどをテストしたい」と要望がありました。そこで4月に、東京都、神奈川県、大阪府に各2000回分、その他の道府県に各1000回分のワクチンを配布。それぞれの自治体で「新システム(ワクチン接種記録システム)がきちんと機能するか」「予診にどのくらいの時間がかかるのか」「注射を打つために肩を出すのに何分かかるのか」「経過観察のスペースはどのくらい必要なのか」などの確認をしていただき、ゴールデンウイーク明けから全力疾走してもらっています。

 接種予約は混乱もありましたが、システムについては好スタートが切れたのではないかと思っています。

“令和の運び屋”としてワクチンを各自治体に配る
医師や歯科医師、看護師等〝注射の打ち手〟を確保

河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣

 5月23日時点で、新型コロナワクチンを1回接種した高齢者の割合が全国で最も高いのは、和歌山県です。和歌山県の仁坂吉伸知事は「県と市町村が議論して、それぞれの市町村に一番ふさわしい進め方を決めて、国から配分されたワクチンを片っ端から打っている」そうです。

 変異株は、感染力が強く、重症化しやすいのが特徴です。3回目の緊急事態宣言を出した4月、菅総理は「希望する高齢者に対して、7月末までに2回のワクチン接種を終える」という強い決意を示しました。ワクチン接種をする高齢者が増えれば重症化する人は減り、医療機関の負担軽減にもつながります。

 1月18日に大臣を拝命した時、ワクチン接種には大きな“ヤマ”が三つあると覚悟しました。

 最初のヤマは、ワクチンをしっかりと確保して、各自治体に配ることです。新型コロナワクチンの円滑な接種に向け、ファイザー社に毎日連絡して「増産体制の整った工場が立ち上がったら必要量のワクチンを日本に」と交渉しました。例えば「3日後の飛行機に載せる」と言われたら、「いや、もう少し早く」「半分でもいいので明日の飛行機に」という具合に、“令和の運び屋”として、一日でも早く、少しでも多くの量のワクチンが日本に到着するよう頑張りました。その後、EU(ヨーロッパ連合)域内の工場でつくったワクチンの輸出はEUの承認が必要になりましたが、とにかく強気の姿勢でEUと交渉した結果、6月末までに全国の高齢者約3600万人に2回接種する分のワクチンを確保することができました。

 ファイザー社のワクチンは、マイナス70度で保管します。今回「コールドチェーン」と呼ばれる、極めて低温のワクチンを安全に保管・輸送するシステムも構築し、6月末までに全ての市町村に配布する手配が済んでいます。

 当初の課題はワクチン供給でしたが、今は人材になっています。7月末までに高齢者の接種を終えるため、それぞれの自治体では「一日何人打たなければいけないのか」「個別のクリニック、集団接種をどうするのか」といった計画を必死になってつくっています。これらを遂行するために、医師や看護師等の“注射の打ち手”をしっかりと確保できるかどうかが、二つ目のヤマです。

 ワクチンを打つ際、健康状態や病歴などを問診票に記入した上で、当日、接種が可能かどうかを判断する「予診」を受けます。この予診は、医師でなければ行えません。ワクチン接種にご協力いただける医師を募集したところ、すでに約1000人が登録。今は特例でオンライン診療ができますから、医師が足りない過疎地や中山間地域では、東京の医師がオンラインで予診を行っているところもあります。

 注射は、医師だけでなく、歯科医師や看護師等も打つことができます。結婚や出産などで離職した、いわゆる「潜在看護師」にも積極的に呼び掛け、研修を受けた後、業務に当たっていただいています。さらに接種のスピードアップを図るため、臨床検査技師や救急救命士も注射を打つことができるようになりました。

若い世代も感染、重症化
国産ワクチンの開発状況は?

 そして、最後のヤマが、若い人へのワクチン接種です。65歳以上の高齢者に続き、基礎疾患のある人、高齢者施設等の従事者、一般の人へと広げていきます。世論調査を見ますと、ワクチン接種を希望する割合は、高齢者が非常に高く、年齢が下がるにつれて低くなる傾向にあります。顕著なのは若い世代の女性ですが、新型コロナウイルスは若い人にも感染します。変異株においては、重症化する年齢がだんだん下がってきています。実際に感染し、回復した後も味覚障害や嗅覚障害、髪の毛が抜けるなどの後遺症に悩まされている若い人は少なくありません。「若いからワクチンを打たなくても大丈夫」ではなく、しっかりと打っていただきたいと思っています。

 新型コロナワクチンは、発症や重症化の予防に高い効果が期待されています。また、科学的に断定することはできませんが、先行して打っているイスラエルなどの例から、かなりの感染予防になっているのではないかといわれています。そうであるならば、ワクチンを打つことで、無症状の人が感染に気付かずに、家庭内や市中で感染を広げてしまうことも防げると考えます。

 ファイザー社のワクチンは1箱で約1000回分打つことができます。人口の少ない離島などでは、高齢者だけでなく島民全員が2回の接種を終えたところもあります。今後は、人口の多い東京23区や政令市などで、どうやって接種を加速させていくかが課題です。

 自治体には引き続きファイザー社のワクチンを打っていただきますが、自衛隊が東京と大阪に設置した大規模接種センターでは5月21日に承認されたモデルナ社のワクチン(有効性約94パーセント)を供給して、接種をスピードアップしていきたいと考えています。

 新型コロナウイルスは約2週間ごとに変異していますが、今のところファイザー社やモデルナ社のワクチンが効かない変異株が出たという情報はありません。

 ただし、麻疹のように一生で1回、ワクチンを打てば効くのかは、まだ何とも言えません。ファイザー社は「ブースター(追加免疫)」といわれる3回目のワクチンを用意しています。それを打つとどれくらいの効果があるのか、あるいは2回の接種で効果がどれくらい持つのかは、これから専門家に科学的に検証していただくことになっています。

 国産ワクチンについては、現在、四つのグループが開発を進めています。大体のグループが治験の最後のステップである、多数の人を対象にして有効性と安全性を確認する段階の手前まできています。しかし、日本ではすでに接種が始まっていますので、国産ワクチンを打つ治験参加者を十分に集めることができません。そこで当初はインドなどの海外で実施する予定でしたが、今インドは感染拡大が深刻で治験を行える状況ではありません。そうなると、試験管の中で効き目があるかどうかをテストして「効果がありそうだ」と判断する。もしくは人間に打っても大丈夫だという安全性の確認ができたら、実際に打っていって「効果があったか、なかったか」を見るしかない状況です。国産ワクチンについては、開発を加速する方策を議論しているところです。

女性未来塾の司会を務めた武井俊輔女性局研修部長(右)
女性未来塾の司会を務めた武井俊輔女性局研修部長(右)

どんなワクチンにも副反応はある
新型コロナワクチン接種のスピードアップに全力

 新型コロナワクチンに限らず、どんなワクチンにも副反応が起こる可能性があります。これはワクチンによって体が免疫をつけるために反応を起こすので、どうしても避けられないことです。言い換えれば、誰にも副反応が出ないワクチンは、誰にも効かないのだと思います。

 新型コロナワクチンは筋肉注射で接種します。私は子供の頃、お尻に筋肉注射をしたことがありますが、めちゃくちゃ痛くて泣き叫んだ記憶があります。しかし、新型コロナワクチンの注射針は細く、実際に打った人に聞くと「ほとんど痛くない」そうです。打つ時は痛くありませんが、数時間後、あるいは次の日に接種部位が痛くなる人は9割以上。つまり、“打ったら痛くなる”と思っていてください。知り合いの外科医は腕の痛みで仕事に支障が出ないよう、手術の前日を避けて接種したそうです。

 また本当にごくまれですがアナフィラキシーといわれる急性アレルギー反応が出る人もいます。これは接種後30分以内に起こることがほとんど。接種後はしばらく会場内に待機していただくことで、アナフィラキシーが起こっても医師や看護師等が適切な対応を行える体制が整っています。

 それから、2回目の接種後に37.5度から38度ぐらいの熱を出す人が、約3人に1人の割合でいます。他にも倦怠感や頭痛など、若い人ほど副反応が強く出るようです。副反応は大体1~2日で収まりますが、熱で苦しかったら解熱剤を、腕が痛くて我慢できなかったら痛み止めの薬を飲んで構いません。高齢のご夫妻が接種する際は、可能であれば日程をずらしていただくと、副反応があった時に看病し合うことができます。

 接種の翌日はあまり予定を入れず、家でゆっくりしていただければと思います。現在、日本経済団体連合会や日本商工会議所、経済同友会などに“ワクチン休暇”の導入をお願いしています。公務員についても、接種する時や副反応が出たら休みが取れるようになりました。

 先日、海外の報道機関の取材を受けた時「日本人は他の国に比べて、ワクチンに対する警戒心が強いですね」と言われました。これは、先ほど述べました70年代の集団訴訟がきっかけとなっていますが、今回の新型コロナワクチンの接種で、国民の皆さまのワクチンに対する意識が変化するのではないかと思っています。副反応への恐怖心は分かりますが、私はデメリットよりもメリットの方がはるかに大きいと考えます。女性未来塾の受講生の皆さまも自分の順番がきたら、ぜひワクチンを打ってください。そして、周りの方々や若い女性に、ワクチンの必要性や効果を発信していただけるとありがたいです。また、ワクチンに関してお困りのことがございましたら、女性局を通じて情報を上げていただければ、しっかりと対応していきます。

 国民の皆さまが安全で有効な新型コロナワクチンを一人でも多く、一日でも早く打てるように全力を尽くします。ワクチン接種の加速化に向けて、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

新型コロナワクチンQ&A
りぶる7月号

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