月刊誌「りぶる」 6月号より
(左)河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣
(右)インタビュアー 吉川ゆうみ女性局長
新型コロナワクチンは、令和3(2021)年2月17日から医療従事者、4月12日から一部の市区町村で高齢者への接種がスタート。
河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣に、ワクチンの必要性、準備や接種の状況、副反応などについて伺いました。
インタビュアーは吉川ゆうみ女性局長です。
吉川 本日は、河野太郎新型コロナワクチン接種推進担当大臣に、皆さまから寄せられている新型コロナワクチンに対するさまざまな疑問、心配事にお答えいただきたいと思います。
初めに、このワクチンの効果や接種するメリットについて教えていただけますか。
河野 ワクチンは感染症に対する免疫をつけたり、強化したりすることで発症や重症化を防ぐ効果があります。
今、日本で承認されているファイザー社の新型コロナワクチンは、2回の接種で95パーセントの有効性が認められています。例えば「ワクチンを打っていない」1万人の中で100人が発症した場合、「ワクチンを打った」1万人では発症者を5人に抑えられるということです。有効性が40~60パーセントといわれるインフルエンザワクチンと比較しても、高い効果があるとされています。
多くの人がワクチンを接種することにより、重症者や死亡者の数を減らすことができます。自らの健康を守るとともに、人手が逼迫している医療機関の負担を減らす助けにもなるのです。
吉川 新型コロナワクチンは、変異株にも効果があるのでしょうか。
河野 一般的にウイルスは常に変異を起こしていくものです。小さな変異でワクチンの効果がなくなるわけではありません。ファイザー社のワクチンの実験でも、変異株のウイルスに作用する抗体がつくられたとの結果が出ていますので、引き続き接種を進めていきます。
また、今後新たな情報が出た場合はその都度公表し、適切に対応してまいります。
吉川 女性局ではオンラインを活用した会議を積極的に行っています。今は月に数回オンラインでつなぎ、全国の女性局の皆さんと顔を合わせながら、意見交換ができるようになりました。
オンラインなどで女性の方々に新型コロナワクチンについてヒアリングしたところ、世代を問わず副反応に対する不安の声が多く上がりました。ワクチンを接種するかどうか考える時、その判断材料としてメリットだけではなく、デメリットも知っておかなければなりません。新型コロナワクチンの副反応については、いかがでしょうか。
河野 新型コロナワクチンに限らず、どんなワクチンにも接種部位の腫れや痛み、発熱、頭痛などの副反応が起こる可能性があります。ワクチンが免疫をつけるために反応を起こすので、どうしても避けられないことなのです。それをご理解いただいた上で述べますと、新型コロナワクチンは他のワクチンと同様に一定の頻度で副反応が起こることは事実です。
ファイザー社製ワクチンの国内治験では、2回の接種後、約80パーセントの人に接種部位の痛みが認められました。今回のワクチンは筋肉注射で針が細いので、打つ時に「痛くない」と思われる人は多いですが、しばらく時間がたってから腫れたり、痛くなったりする方が多いです。しかし、それはワクチンがしっかり効いている証拠ともいえます。医療従事者たちは腕の痛みで仕事に支障が出ないよう、接種日は手術の前日を避けたり、休日の前日を選んだり、それぞれに工夫をして決めていらっしゃいます。
その他の主な副反応として、倦怠感が約60パーセント、37.5度以上の発熱が約33パーセントの人に確認されました。38度以上になる人も10パーセントを超えたと報告されています。
痛みがひどかったら痛み止め、熱が高くてつらい場合は解熱剤を飲んでいただいて構いません。副反応は大体1~2日で収まりますから、接種の翌日はあまり予定を入れずに、家でゆっくりできるといいですね。自治体によりますが、可能であれば、ご夫婦は接種日をずらしていただくのがおすすめです。もし副反応が出た時、お互いに看病し合うことができます。
また、企業の経営者には“ワクチン休暇”の導入をお願いしようと考えています。ワクチンを打つために少しの間会社を抜ける、半日休む、あるいは副反応が出た時にはしっかり休める環境を整えていただきたいのです。
吉川 小児科医でもある自見はなこ女性局次長は、子供に予防接種を打つ時、親御さんに「熱が出ることもありますが、子供に元気があれば心配はないですよ。ワクチンが免疫を体内でつくっている証拠ですよ」と伝えておくそうです。それを知らないと、子供が発熱した時に救急車を呼ぶべきか、夜間病院に連れて行くべきか…と焦ってしまう。副反応について知ることは、安心してワクチンを打つために、また副反応が出ても慌てないために、とても重要だと思います。
吉川 先日、ある子育てサークルで話を聞く機会がありました。そこで、3人の幼い子供がいるお母さんが「接種会場には子供を連れて行かざるを得ない。接種して、私がもしアナフィラキシー(急性アレルギー反応)になってしまったら、子供たちがどうなるか心配なので、とても打ちに行けない」と言うのです。
河野 本当にごくまれではありますが、アナフィラキシーといわれる強い副反応が出る人もいます。その確率はアメリカの報告では100万人に5人程度とされています。
アナフィラキシーは接種後30分以内に起こることがほとんどですので、接種後はしばらく会場内で待機していただき、様子を見ることになっています。待機の間、お母さんの健康観察は医師がしっかり行います。そこで、お母さんが治療を受けることになったとしても会場には看護師もいますし、お子さんをきちんと見てくれますので、ご安心ください。
日本の新型コロナワクチン接種でアナフィラキシーになった人はいますが、現時点で全員が適切な治療を受けて回復しています。
吉川 アナフィラキシーが起こっても医師や看護師が適切な対応を行える万全の体制が整っているのですね。
一部マスコミで「日本はアナフィラキシー発生率が高い」「ワクチンが体質に合わないのではないか」などの報道がありましたが、いかがですか。
河野 アメリカでも医療従事者が接種した際のアナフィラキシー発生率が、一般の人よりも少し高いです。日本では優先接種している医療従事者から、さまざまな情報が丁寧に上がってくるので欧米より数が多いようです。
いずれにせよ、日本で起きた副反応の状況は、厚生労働省の審議会で専門家の先生方が逐次チェックし、評価してくださっています。政府として、その結果をしっかり公表してまいります。
また、万が一、新型コロナワクチン接種の副反応で治療が必要になったり、障害が残ったりした場合は、予防接種法に基づく救済の対象となり、医療費や障害年金等の給付を受けられます。
吉川 新型コロナワクチンについて不安なことを身近に相談できる窓口はあるのでしょうか。
河野 厚生労働省に新型コロナワクチンコールセンターを立ち上げました。また、各都道府県には、副反応などの医学的な質問にも対応する問い合わせ窓口を開設していますので、不安なことがありましたら電話でご相談ください。
吉川 ところで、基礎疾患やアレルギーを持っている人の副反応への不安はさらに強いですが、ワクチンを接種してもよいのでしょうか。
河野 基礎疾患のある人は新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高いため、優先接種の対象となっています。しかし、病状が悪化している時など、接種を避けた方がよい場合もあるので、かかりつけ医に相談した上で接種するかどうかを決めていただくのがいいと思います。アレルギーをお持ちの人も同様に、まずは医師にご相談ください。
吉川 妊娠中や授乳中の人はいかがですか。
河野 妊娠中や授乳中の人、また将来子供を産みたいと考えている人もワクチンを接種することができます。ただし、妊婦については安全性に関する科学的データがまだ少ないので、予防接種法で定められた努力義務の対象から外しています。
ちなみに、アメリカ疾病対策予防センターの発表によると、既に3万人以上の妊婦が1回以上ワクチンを接種していますが、副反応は一般の人と差異はないそうです。また、流産についても自然発生率と比べて特に問題はなかったと報告されています。かかりつけ医と相談し、接種のメリットとデメリットをよく検討した上でご判断いただくことになりますが、私自身はメリットの方が大きいと考えています。
インタビューの続きはりぶる本誌でご覧ください
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