月刊誌「りぶる」 2月号より
深谷市のある埼玉県北部ならびに秩父・本庄の魅力や特徴について、埼玉県第11区選出の小泉龍司衆議院議員にインタビューしました。
―埼玉県第11区の魅力を教えてください。
小泉埼玉県北部は東京から70~80キロ圏内に位置し、アクセスは上越新幹線や車で1時間余り。そこには、荒川と利根川の恵みがもたらした自然豊かな田園と森林が広がっています。
冬は、荒川に白鳥が飛来。春になって白鳥たちが北の空へ飛び立つと、川沿いの土手では、深谷から本庄、そして秩父へと、桜の開花リレーが始まります。
夏は各地で豪華絢爛な山車や屋台が練り歩く祭りが開催され、大輪の花火が夜空と水面に咲き誇ります。
秋は、秩父の中津渓谷が見事な紅葉の錦で彩られ、旧神泉村(現・神川町)の山々では冬桜がほころび始めます。12月には、日本三大曳山祭りの一つで300年余りの歴史がある「秩父夜祭」が行われ、それが終わると新しい年を迎える準備に入ります。
このように、埼玉県第11区は四季折々の自然の美しさと華やかなイベントが楽しめる魅力的な地域です。
―食については、いかがですか
小泉深谷のおすすめグルメといえば、まずは「煮ぼうとう」です。幅広の麺と深谷ねぎ、地元で採れた野菜がたっぷり。とろみのある、しょうゆ味のスープで煮込んだ郷土料理で、渋沢栄一の好物であったことでも知られています。おいしいので、ぜひ食べてみてください。
次に、スイーツです。深谷は人気の洋菓子だけでなく、通をもうならす和菓子が勢ぞろい。メイン通りはもちろん、路地裏にも、〝おいしさ〟にこだわる昔ながらの和菓子店が点在しています。それぞれに羊羹、最中など、地元の人々に愛されてきた自慢の看板商品があるので、散策しながら和菓子店巡りを楽しむのもおすすめですよ。
それから、「ふかやカレーやきそば」も一度試していただきたいです。ここ数年、深谷の新たな名物をつくる取り組みが行われ、平成28(2016)年の「新・ご当地グルメコンテスト」で最優秀賞を取った料理です。定義は、①やきそばであること。②カレー味であること。③深谷産の野菜が使われていること―の三つ。現在、30軒ほどの店で、オリジナリティーあふれるカレーやきそばが味わえます。
言ってみれば、深谷は古いものと新しいものが共存する町。郷土料理の煮ぼうとうと新・ご当地グルメのカレーやきそば、伝統ある和菓子店と新しい洋菓子店、レンガ造りの建物とおしゃれなカフェ…。さらに、古い酒蔵を改築して誕生したミニシアターもあります。
このように新旧の魅力が入り交じっているのは、歴史的に醸成されてきた土壌があるからです。
中世は鎌倉街道が存在し、沿道には〝いざ鎌倉〟に馳せ参じる鎌倉幕府の御家人たちが館を構えていました。その後、江戸時代になると、深谷や本庄が中山道の宿場町として栄え、利根川沿いの中瀬が水運の要衝地としてにぎわいます。
こうした人々の往来を通じて、常に鎌倉や江戸の新しい文化や情報が入ってきました。それらを受け入れ、その中から良いものを選別してきた歴史と伝統があるからこそ、本当に価値のあるものが今なお残り、新しいものをバランス良く取り入れているのだと思います。
―埼玉県北部から多くの偉人を輩出しています。
小泉深谷宿や本庄宿から江戸までは、中山道を歩けば2日ほど。この〝地の利〟を生かして、志があり、能力のある多くの若者が江戸遊学しました。
郷土が誇る偉人の一人が、江戸時代の国学者の塙保己一です。現在の本庄市に生家がある保己一は幼少の頃に視力を失いながらも学問を志し、全国津々浦々の古典文学や記録を分類、整理しました。約40年の歳月をかけて、『群書類従』を出版。この本は後に、全国に約1万5000あった寺子屋で使われる教材の基となりました。
江戸時代後期、わが国はかなりの識字率だったといわれています。日本を訪れた列強国のある外交官は、たくさんの日本人が本を読む光景を目の当たりにして、その水準の高さに驚き、「日本の植民地化は困難」と本国に連絡したそうです。保己一の功績によって植民地化を免れた日本は、その後、現在の深谷市で生まれた渋沢栄一によって、近代化と富国を成し遂げていきます。
埼玉県北部出身の二人が、近代日本の礎を築く大きな原動力となったのです。歴史や文化が根付き、真面目で誠実な人柄にあふれる土地だったからこそ、こうした人たちが育まれたのだと思います。
―渋沢栄一について、どのような印象をお持ちですか。
小泉栄一は自分の考えを行動に移せる〝実践家〟であり、〝哲学者〟でもありました。彼の偉業は、この二つの側面から理解するべきだと考えています。
〝実践家〟としての栄一は「日本が欧米列強の国力に追い付くためには、商工業の発展を図るしかない」と考え、明治6(1873)年に大蔵省(現・財務省)を辞め、実業家に転身。今では当たり前となった株式会社や銀行の制度を創設し、日本の金融・資本市場の基礎をつくり上げました。
それから約150年の歳月を経て令和6(2024)年に発行される新一万円札の顔に選ばれたことはとても喜ばしく、郷土の一員として誇らしいです。栄一は、全国の人に評価される巡り合わせなのだと、歴史の必然性を改めて感じています。
―〝哲学者〟としての側面は、いかがですか。
小泉栄一は著書『論語と算盤』で、「道義的に正しい道を歩まねば、一時的に富を得ても長続きはしない」「論語と算盤という言葉は一見かけ離れたものを示すようだが、二つで一つなのだ」と説いています。つまり、経済発展を長く維持するには、社会的正義を実践しなければならないということです。この考え方は「道徳経済合一説」と呼ばれ、自らその伝道者となっていきました。
栄一は、非常に清廉潔白な人物でした。生涯で約500の企業の設立に関わりましたが、自らの出資は多くても5~10パーセントほどに抑え、依頼されれば社外役員になるだけ。財閥からの提携の申し出も断っています。それは、利益の独占が健全な競争を基盤とする資本主義をゆがめると考えたからです。同様に、美しい景観を独り占めにしてはならないという理由で、別荘を持つこともありませんでした。
また、栄一の活動は晩年、グローバル化していき、災害や飢饉の国際的救助活動を積極的に行っています。こうした、いわゆる民間外交は、国際社会と長く、深く心を通わせようとした取り組みであり、「長期的視野」や「国民目線」という点においても政治家が手本とすべき外交だと思います。
なぜなら、われわれの議員外交や政党間交流は、積み重ねが公式外交につながるので、より長期的な視野で継続的に行います。そして、国民目線に立って、文化、スポーツ、青少年などを通じた幅広い交流を行うことが極めて重要だからです。
―栄一の民間外交について詳しく教えてください。
小泉ヨーロッパ諸国、ロシア、インドなどと積極的に交流しましたが、注目すべき点は60歳を超えてからアメリカを4回訪問したことです。
個人として、また渡米実業団の団長として、アメリカ大統領や上下両院議員たちと面談して交流を深めるなど、栄一は日米親善の懸け橋として重要な役割を果たしました。恐らく栄一は、この後、日米関係が悪化することを予想していたのでしょう。そのため日本の経済界に、アメリカとの協調路線を何としても植え付けたかったのだと思います。栄一は満州事変が起きた昭和6(1931)年に亡くなりますが、孫の鮫島純子さんは、納棺の時に伯母の穂積歌子さんが「これで戦争を止められる人がまた一人いなくなった」と嘆いていたのを記憶しているそうです。そして、「戦前、(祖父が)老体を押して何度も渡米したのは、日米の関係が良くあってほしいという強い信念があったから」と話されています。それほど栄一の民間外交は、本腰を入れたものでした。
―2月から渋沢栄一の生涯を描いた大河ドラマが放映されます。
小泉これまでの歴史ドラマは、政治や戦乱をテーマにしたものが多かったのですが、栄一は民間人として、戦争を回避しようと奔走した人。これまでにはない、新しい視点の大河ドラマになるのではないかと期待しています。
近代日本の〝実像〟を映し出す中で、栄一の強く大きな志や潔い人柄、それを育んだ埼玉県北部の風土を生き生きと描いていただければと願っています。
―深谷は農業も盛んですね。
小泉利根川と荒川がもたらした肥沃な土を生かして、多彩な農産物を全国に向けて出荷しています。
四季折々の花々の生産が盛んで、特にユリは埼玉県が日本一の出荷量を誇り、その主な生産地が深谷です。地域ブランドの深谷ゆりは、ユリ独特の香りが控えめなのが特徴。オレンジや黄色、ピンクなど明るい色がたくさんあり、部屋を華やかに彩ります。
また、市の花でもあるチューリップは大正初期から栽培が始められ、産地としてはパイオニア的存在。11月から4月頃まで、長い期間楽しめます。
それから野菜では、ブロッコリーやヤマトイモ、伝統野菜の白なすなどを生産しています。中でも有名なのが、深谷ねぎです。一年中収穫されていますが、冬は甘みが増して、すき焼きに入れると〝肉よりもおいしい!〟と絶賛されるほど。深谷の大地が育んだ逸品を、ぜひご堪能ください。
―埼玉県第11区の未来像についていかがお考えですか。
小泉豊かな農産物や自然、先人から受け継いできた歴史や文化をこれからも大切に育んでいく姿です。その上で、この地域を訪れる人や移住人口を増やし、最終的には東京一極集中の壁を崩したいと考えています。
新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが推進され、〝働くこと〟イコール〝職場に出勤すること〟ではない時代がやってきました。しかし、直接顔を合わせなければできないこともあるのは事実。埼玉県北部から東京までは1時間余りですから、普段は緑に囲まれながらテレワークをし、必要な時はすぐに出勤することができます。デジタルの力を取り入れながら、自然あふれる環境の中で自分の人生やライフスタイルを見つめ直し、家族とともに過ごす。これが〝真の豊かさ〟につながっていく過程なのだと、私は思っています。
―『りぶる』読者へメッセージをお願いします。
小泉今号は、埼玉県連女性局の皆さまが、深谷市内にある渋沢栄一ゆかりの地や、おすすめグルメ・スポットを紹介していますので、新型コロナウイルス感染症が収束したら、ぜひ訪ねていただきたいと思います。
また、「花園」(深谷)という地名や、「御花畑」(秩父)という駅があるほど、花の宝庫。あちこちで季節の花を愛でることができますので、いつ訪れても新鮮な発見があります。
「花より団子」という方には、煮ぼうとう、ふかやカレーやきそばの他にも、すき焼き、みそ豚丼、わらじカツ丼、天然氷を使ったかき氷など、名物グルメがめじろ押し。イチゴやブドウ、ナシなど、季節のフルーツもおいしいですよ。
「団子より一杯」という方には、スパークリング清酒やねぎ焼酎、モルトウイスキー、ハチミツでつくったリキュールなどもおすすめ。まずは深谷を満喫し、そこから本庄児玉や寄居、秩父に足を延ばし、ご家族みんなで楽しんでいただければと思います。
全国の皆さまに、埼玉県北部や秩父の魅力を体感していただけたら、こんなにうれしいことはありません。
新型コロナウイルス感染症が収束したら、『りぶる』読者限定で、深谷ねぎの収穫体験はいかがですか。つなぎを着て収穫機に乗り、ネギを掘って束ねていくのですが、なかなか面白いですよ。収穫後は、大きなネギの束を抱えて記念撮影もできます。その日が一日も早く来るように、読者の皆さま、力を合わせてこの困難を乗り越えていきましょう。