生物多様性回復の行動内訳の図=環境省提供
持続可能な開発目標(SDGs)の一つに「つくる責任つかう責任」が掲げられ、人や環境等に配慮した消費行動であるエシカル消費が注目される等、環境に配慮した企業や消費者の意識や行動の変容が求められています。地球上の生物による豊かな個性とつながりである生物多様性の損失を止め、持続可能な経済社会を実現するために、政府は3月29日、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の連名で策定し、公表しました。
ビジネス機会+雇用を創出
環境配慮型養殖技術=環境省資料より掲載
昨年5月に閣議決定した「生物多様性国家戦略2020―2030」では世界の陸地の 75パーセントは著しく改変され、海洋の66パーセントは複数 の人為的な要因の影響下にあり、1700年以降湿地の85パーセント以上が消失したこと。さらに、調査されているほぼ全ての動植物の約 25パーセントの種の絶滅が危惧されている等、過去50年の間、人類史上かつてない速度で地球全体の自然が変化していることが指摘されています。
そうした中で生物多様性増進活動促進法案が4月2日の衆院本会議で可決し、参院に送付されました。経済界でも自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め反転させるネイチャーポジティブ(別表参照)の動きが注目されています。世界経済フォーラム(WEF)が令和2年に発表した報告書では、世界各国の国内総生産(GDP)の半分以上が自然の損失によって潜在的に脅かされている一方、ネイチャーポジティブ経済への移行で令和12年までに3億9500万人の雇用創出と年間約1070兆円規模のビジネス機会が見込めると指摘。わが国では同時点で約47兆円のビジネス機会が推計されています。
具体例として環境配慮型養殖技術が挙げられます(写真別掲)。