お知らせ「自由民主」先出し文化人生100年時代

自由民主1面コラム「幸響」
古庄 玄知 広報本部新聞出版局次長

自由民主1面コラム「幸響」古庄 玄知 広報本部新聞出版局次長

生きることの陽と陰

2年前、人間国宝野村万作先生の狂言「靱猿(うつぼざる)」を観る機会に恵まれた。ストーリーの奇抜さもさることながら、私が驚いたのは、大名を演じた万作先生が7歳の女の子が演じる小猿と一緒に舞台の上を飛び跳ね、転げ回ったことだ▼万作先生は当時90歳。90歳の万作先生がこの芸をいつまでも演じることができる裏側には、観客に対して決して見せることのない、永年にわたる日々の努力・鍛錬と幾多の苦悩が存在していたのだろう。万作先生の狂言を通して「生きる」ということを深く考えさせられた▼人間には「陽」と「陰」がある。往々にして陽だけでその人を評価しがちである。あたかも陰は無いかの如き錯覚に陥ることもある。しかし、陰の無い人はいない。人間は陽と陰で成り立っている。どれだけ素晴らしい陰を持つかによって陽の価値が違ってくる。狂言の内容もさることながら、90歳の万作先生が転げ回る演技を観て全観客が感動とともに驚嘆した。私は密かに「生きる」ということの意味を教えて頂いた。

ご購読のお申し込みはこちら。